【男観察日記⑤】研究員 山下さん(仮名・29)現在編
【山下さんとの現在】
スマホの時代となってからもガラケーを残し2台持ちしていたことが結果として山下さんとのその後を繋ぐものとなった。
あるとき、山下さんから「まだこのメールアドレス生きてたら面白いな」というメールがガラケーに届いた。
普段開いていなかったガラケーである。メールが来た瞬間に偶然にも開いていたせいで変に運命を感じてしまった。
私は即座に返信をし、会うこととなった。
私は大学院生になっており、研究室を見てみたいというので深夜の研究室に招いた。
やはりいい感じの雰囲気になってから、ああこの人はなにもしないんだったと思い出し、なんとなくほっとした自分もいて、そのまま楽しく夜通し話した。
山下さんもそのまま大学院に進学し、現在は研究員として働いているようだ。
連絡は取っていない。
あの少し変わった物言いはそのままだろうか。もう結婚なんかもしているのだろうか。
いろいろあった男性と友人関係になれたという意味で、貴重な存在だったから惜しい。
こちらから「このメールアドレス、まだ生きてたら」なんてメールしてみようか。
そういえばガラケーはもう解約してしまった。もうメールアドレスもわからないのであった。
【男観察日記⑤】研究員 山下さん(仮名・29)お別れ編
【山下さんとのお別れ】
山下さんには少し変わったところがあるようだった。
例えば話し方。文学部だからなのだろうか(違うと思う)、「〜である」といったような書き物に出てくるような話し方をすることがあった。
他にも、山下さんには熱心に信仰する宗教があった。
お付き合いの中で私もその宗教の聖典読むこと、集会へ行くことを何度か勧められらようになった。
ただ特段強要されることはなかったので、それ自体には抵抗は感じていなかった。
ある時、いわゆる「いい感じ」の雰囲気になった。
私も「そろそろかな?」とそれなりの下着を身につけて挑んでいた。
山下さん、宗教上の理由で結婚前の性交渉はしないのだという。
要は、キスまで。それ以上はなし、とのこと。
そこまでの敬虔な信仰心は尊敬していたし、変わったところも見た目とのギャップでいいなと思っていた。
しかしやはり付き合いが長くなってくると少し物悲しさを感じるのだった。
そのうちだんだんと連絡を取る頻度が減っていき、自然消滅のような形になった。
【男観察日記⑤】研究員 山下さん(仮名・29)お付き合い編
【山下さんとのお付き合い】
偶然にも山下さんの方も私のことが少し気になっていたとのこと(不審な挨拶もしてみるものだ)、その後のメールでのやりとりは意外にも順調。
食事に誘われ、その後何度かデートを重ね、ちょうどクリスマスというタイミングだったこともあり告白された。
イケメンというのは意外にも寄ってくる異性は少ないのかもしれない。
恋愛経験は豊富という感じではなかった。むしろ不器用に感じ、顔面偏差値とのギャップがまたたまらない。またもやどっぷりハマってしまった。
しかしこの恋愛、一瞬にして終わるのである。
恋愛をする度に相手との永遠を思い描いては瞬く間に消えていく。そして傷つく。
つくづく恋愛とは恐ろしいものだと思う。
【男観察日記⑤】研究員 山下さん(仮名・29)出会い編
【研究員 山下さん(仮名・29)の場合】
学歴★★★
年収★
容姿★★★★★
優しさ★★★
【山下さんとの出会い】
話は遡り、大学時代の出会いである。
山下さんは文学部、私は理学部だったが、教養系の単位も取得する必要があったため出ていた講義で出会った。
「こんなイケメンうちの学校にいた!!?」が第一印象。
とにかく顔が小さく背が高い、いわゆるイケメンで、その後モデルとして活動していること、大学のミスターコンテストにも出ていることなどがわかった。
私はなんとかして知り合いくらいのポジションになりたいと、講義の度に目を合わせては、挨拶をし、かついろいろなところで「文学部の山下さんが好き」と公言してなんとか繋がりを得ようとしていた(なんという肉食っぷり!)。
その努力(?)が実り山下さんと同じサークルであるという友人が見つかったので、すぐさま私のメールアドレスを伝えてほしいと頼んだ。
講義の度の挨拶の成果だろう(というか知らない人に何度も挨拶されたら不審で覚えてしまうだろう)山下さんも私の顔と名前が一致しており、晴れて連絡を取り合う仲になった。
もう、お祭り騒ぎである。あんなイケメンとお近づきになれた!それだけで嬉しかった。
【男観察日記④】不動産営業マン 高橋さん(仮名・30)現在編
【高橋さんとの現在】
高橋さんとはその後連絡を取れていないが、友人伝いで彼女ができたと聞いている。
LINEのアイコンも彼女に撮ってもらった風の写真に変わっていたことから仲睦まじさが垣間見える(なお私とのお付き合いの中では写真がアイコンに採用されるようなことはなかった)。
高橋さん、今度こそは結婚するのではないだろうか。
一抹の寂しさは感じながらも、幸せになって欲しいと思えるので自分自身の傷もそこまで深くないのだろうと思う。
かつては別れとなれば泣きじゃくり、この世の終わりのように感じていた。
ところが歳を重ねてそれなりの恋愛経験も積むと、すれ違いや別れもまあいつものことかと受け入れられるようになってしまう。
人間は傷つくと強くなるのだろう。
別れよりも、そんな自分に少し寂しくなるのだった。
【男観察日記④】不動産営業マン 高橋さん(仮名・30)お別れ編
【高橋さんとのお別れ】
あるとき高橋さんから、珍しく急に電話がかかってきた。
友人が結婚したとのこと、どうやら結婚欲がピークに達したらしかった。
高橋さんは、「はなこは結婚する気があるのか?」と聞いた。
私は高橋さんは結婚がしたいだけのように見える。私でなくてもいいのではないかと聞いた。
はなこでなきゃだめだよ、と言ってほしくてちょっと拗ねてみた、くらいのつもりだった。
高橋さんから「そうかもしれない」と聞くと一瞬血の気が引いた。そしてそれならもう無理だね、と反射的に答えてしまった。
次の日になって冷静になり、謝りの電話を入れたがもう遅かった。
その後、彼から連絡が来ることはなかった。
【男観察日記④】不動産営業マン 高橋さん(仮名・30)お付き合い編
【高橋さんとのお付き合い】
その後数回の食事の後、高橋さんから告白され、付き合うこととなった。
告白の言葉はとてもロマンチック!という類のものではなかったのだが、それでも今度こそやっと幸せになれる…諦めず頑張ってよかったよロマンスの神様…とお風呂でひとりしみじみとしていたことを覚えている(その後ロマンスの神様の厳しさをまた思い知ることとなる)。
高橋さんは仕事柄、土日休みの私とは休みが合わず、なかなかデートらしいデートをすることもできなかったが、休みの日は私の職場までランチをしに来てくれた。
仕事を抜け出し彼氏とビルの中庭でランチ…時にはちょっとしたプレゼントを持ってきてくれる。
待ち合わせして彼の姿を見つけると自然と足取りが軽くなる、幸せなひとときである。
高橋さんは付き合ってまだ数ヶ月という段階で、事あるごとに結婚の話を口にした。
子どもは何人欲しい、いつ家を買う、転勤になったらどうする…もうそれなりの年齢の恋愛だから仕方がないのだが、かなり現実的なところがあった。